研究課題
本研究の目的は、オートファジー関連筋疾患の病態解明と治療法開発のため、Lamp2遺伝子欠損(KO)マウスを用いて、骨格筋・心筋の表現型を生理学的または病理学的に特徴付けること、ホモログ分子であるLamp1を外来性に発現させることでの表現型の回復を解析することである。今年度は、LAMP2KOマウスの骨格筋の生理学的性質を調べた。LAMP-2KOマウスは50週齢以降に、運動能力の著明な低下を示し、骨格筋は収縮力の低下と筋萎縮(特に筋線維萎縮)を示した。また、心臓はサイズが増大し、筋線維自体の肥大化と大規模な線維化も起こっていた。また、抗体マーカーによる病理学的解析では骨格筋・心筋はともに自己貪食空胞の蓄積を示した。電子顕微鏡下での骨格筋での自己貪食空胞の観察では、筋線維内に大きな領域を占める、多数の自己貪食空胞の集積構造が観察されたが、その周りに分布する個々の空胞には、むしろインタクトな粗面小胞体や輸送小胞様の構造の他、電子密度の高い顆粒状の物質が蓄積していた。LAMP-2KOマウスは遺伝学的にはDanon病のモデルであるが、今回、実際にモデルマウスにおいて骨格筋と心筋の症状をはっきりと特徴づけたことは、治療実験に向けて、測定すべき視点が準備できたといえる。また、電子顕微鏡で観察された空胞内の未消化オルガネラ構造の蓄積は、Lamp2KO細胞でのリソソーム内pHの上昇やリソソーム酵素の輸送異常と考え合わせ、Lamp2欠損におけるリソソーム機能(分解反応)の異常を示唆するものと考えられる、しかしながら、加齢に伴う変化であることをも考え合わせると、単にLamp2欠損から生じることだけでなく、他の因子を関係していると考えられる。これらのことは、Danon病の病態を考える上で意義深いと思われる。今後は、今年度の情報を基礎として、治療法開発を進めたいと考えている。
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