研究課題
メタボリックシンドロームは、肥満を基盤とし、血圧の上昇・耐糖能の悪化・脂質代謝の乱れの三主徴をはじめとする種々の病態を呈するものとして知られ、成人男性の半数がこのシンドロームの範疇に入るともいわれている。しかし、特に血圧上昇については、その詳細な分子機序には不明な点も多い。我々は、個体レベルでの代謝調節機構について研究を進めているうち、自律神経を介した臓器間の代謝情報ネットワークが各臓器の協調的による全身での調節代謝に重要な役割を果たすことを見出した。その一つ、肝でのPPARγ発現による肝での脂肪蓄積シグナルが、迷走神経求心路および交感神経遠心路の活性化を介してエネルギー代謝を亢進するという臓器間ネットワークに注目し研究を進めた。肥満モデルマウスにおいて、肝PPARγ発現のノックダウンや迷走神経求心路遮断により、体重増加に伴う血圧の上昇が抑制された。さらに、PPARγの下流に位置するFsp27をやせマウスの肝に過剰発現させると血圧が上昇し、肥満マウスの肝でノックダウンすることにより血圧上昇が抑制された。さらに、迷走神経求心路の遮断により、肝Fsp27発現による血圧上昇は抑制された。これらから、エネルギー過剰摂取により誘発される肝でのPPARγ-FSP27のupregulationが、迷走神経求心路・交感神経遠心路からなる神経ネットワークを介して、高血圧の発症に関与していることが示された。本成果は、メタボリックシンドロームの病態を明らかとし、その治療法開発につながるものと考えられる。
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