研究課題
我々は、HB-EGFの新規結合蛋白質としてメタロプロテアーゼnardilysin(NRDc)を単離同定し、NRDcが様々な膜蛋白質の細胞外ドメインシェディングを活性化することを明らかにした。NRDc欠損マウスを作製したところ、内臓脂肪減少、血清中性脂肪低下、インスリン感受性亢進、低血圧、というメタボリックシンドロームとは全く逆の表現型を呈することが明らかになった。本研究では、これらの表現型発現の分子機構、メタボリックシンドロームにおけるNRDcの病態生理学的意義を解明することを目的とし、将来的には同分子メカニズムを基盤とした、メタボリックシンドロームの新規予防法・治療法の開発を目指す。本研究において、野生型およびNRDcヘテロ欠損マウス(NRDc+/-)に高脂肪食負荷(3ヶ月間)を行ったところ、NRDc+/-の体重増加は野生型と比べて明らかに少なく、インスリン感受性も高いことが明らかになった。また、白色脂肪組織における炎症細胞浸潤も有意に減少していたことから、NRDcが慢性炎症のコントロールを介して糖脂質エネルギー代謝を制御している可能性が示唆された。平成22年度においては、NRDc+/-の肝臓,白色脂肪組織において、炎症性サイトカインTNF-αのシェディングが減少していること、核内受容体PPARαが活性化されていることを見出した。さらに、NRDcが絶食等の代謝シグナルに応じて細胞質と核をシャトリングすること、核内でPPARαの制御因子として働くことを明らかにし,これらがNRDc発現低下による糖脂質代謝改善の分子機構であると考えられた。
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