研究課題/領域番号 |
20390256
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 静也 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (60243242)
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研究分担者 |
大濱 透 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (20467583)
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キーワード | アデイポネクチン / HDL / 粥状動脈硬化 / メタボリックシンドローム / 脂質排泄 / コレステロール逆転送 / ABCA1 / ABCG1 |
研究概要 |
私共はアディポネクチン(APN)が肝臓でのアポA-I及びABCA1の発現を濃度依存性に増加させてHDLの新生を増加させ、逆にVLDLのアポB-100の分泌を抑制すること、またABCA1発現増加によりマクロファージ(Mφ)からのアポ蛋白A-Iを介したコレステロール引き抜きを促進することを見出した。肝臓ではPPAR-αがアポA-Iの発現を調節し、ABCA1の発現はアポA-Iと同様にPPAR-αとLXRも密接に関わる。本年度はAPNによるHDL新生増加の分子機構を検討するため、アポA-IやABCA1遺伝子の転写を制御する核内受容体に及ぼすAPNの影響を解析した。ヒトAPNを肝細胞癌由来HepG2細胞の培養液に添加すると、PPAR-α、LXRのmRNA・蛋白発現には影響がなかったが、アポA-I、ABCA1の発現は著しく増加した。また、APNの添加により、ABCA1の発現増加と共に転写因子COUP-TF2の発現が著しく増加した。そこで、siRNAを用いてCOUP-TF2の発現を抑制すると、ABCA1の発現も抑制された。逆に、COUP-TF2を過剰発現させるとABCA1の発現も著しく増加した。APN-KOマウスにおいてはHDL-Cレベルは野生型と有意差はなかったが、アポA-Iレベル、肝臓でのABCA1発現は低下しており、COUP-TF2 ・ LXR-αの発現が低下していた。従って、オーファンレセプターの1つであるCOUP-TF2が肝臓におけるAPNによるABCA1の発現誘導には転写因子COUP-TF2が関与する可能性が考えられ、今後COUP-TF2の過剰発現系を用いて、肝臓におけるABCA1、アポ蛋白A-Iに及ぼす影響を検討する予定である。一方、APNによるVLDLのアポB-100の分泌抑制の機序としてHNF-4αを介する可能性を示唆する知見を得ており、今後さらに検討の予定である。
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