研究概要 |
初年度は、アンドロゲンの抗肥満作用機序の一端として、エネルギー産生亢進作用のあるレプチンシグナルのアンドロゲン受容体(AR)による活性化機構を明らかにした(Endocrinology 149 : 6028-36, 2008)。 この仕事を発展させる形で、当該年度は、新規の選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(selective androgen receptor modulator : SARM)化合物のS42を見出した。S42は、dihidrotestosterone (DHT)と異なり睾丸摘出ラットの前立腺を刺激せずに、血中の中性脂肪を著明に低下させることを明らかにし、抗メタボ作用を有する化合物であることを見出した(Endocrinology 150 : 5606-5616, 2009)。 また、アンドロゲンと動脈硬化症との関連については、テストステロンがエストロゲンに転換されてしまうため、アンドロゲンの直接効果の有無については一定の見解がなかった。そこで、高コレステロール食負荷ラビットを動脈硬化モデルとして、aromatizationによりエストロゲンに転換されることがないDHTの投与研究を行った。このモデル動物では精巣摘出群が、さらに動脈硬化を増悪させたが、DHT除放ペレットによるDHTの生理的濃度の達成が、その動脈硬化を抑制すること、その機序には酸化LDL受容体(LOX-1 : lectin-like oxidized low density lipoprotein receptor-1)の抑制が関与すること明らかにした(Endocrinology, 2010 in press)。
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