本研究の目的は、MAMLD1変異陽性患者の臨床像の解析とMAMLD1の細胞内機能の解明により、本遺伝子変異による性分化異常・生殖機能障害の疾患成立機序を明らかとすることである。平成21年度は、以下の進展が見られた。 1.MAMLD1変異陽性患者の臨床像の解析:200例以上の男児外性器異常症患者を対象として、MAMLD1変異スクリーニングを行なった。その結果、3つのナンセンス変異、1つのスプライスアクセプター変異、1つのミスセンス変異が同定された。さらに3つのナンセンス変異がnonsense mediated mRNA decayの機序により生体内において早期に分解され、スプライスアクセプター変異とミスセンス変異が安定型mRNAを形成することが見出された。この知見に基づき、スプライスアクセプター変異とミスセンス変異の機能解析を開始した。さらに、患者の臨床像の解析から、MAMLD1変異が、出生時の外性器異常のみならず経時的精巣機能低下を招く可能性が見出された。 2.MAMLD1細胞内機能の解明:マウスLeydig腫瘍細胞を用いて、siRNAによるMamld1一過性発現抑制を行ない、MAMLD1の細胞内機能を検討した。その結果、Mamld1のノックダウンが、CYP17a1発現量の減少とandrostenedioneとtestosteroneを含む複数のステロイド代謝産物の産生低下を招くことが見出された。以上の成績は、Mamld1/MAMLD1が精巣におけるステロイド合成酵素の転写活性化を介して、男性ホルモン産生に関与する可能性を示唆する。
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