研究概要 |
急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)および関連疾患について、その発症に関わる遺伝学的基盤の解明と新たな治療・診断の標的分子を同定することを目的として、これらの疾患を有する20例の代表的な症例について全エクソンにおよぶ変異解析を行った。すなわち、各症例について腫瘍および正常対象(CD3陽性細胞)よりゲノムDNAを抽出し、断片化したゲノムDNA断片より、SureSelect【○!R】システムを用いてエクソン配列を濃縮したのち、Illumina社GAIIxシーケンサを用いて得られた濃縮DNA断片のdeepリシーケンスを行った。腫瘍細胞に検出された塩基置換のうち、SNPデータベースおよびCD3陽性分画に認められた塩基置換を体細胞変異の候補として抽出したのち、最終的にSangerシーケンスにより体細胞変異の確認を行った。その結果、計219個(一例あたり10.9個)の体細胞変異が同定された。今回の全エクソンリシーケンスによって、TP53,RUNX1,RAS,c-CBL,TET2,EZH2,ASXL1,JAK2,and IDH1/2など、従来骨髄系腫瘍の標的遺伝子として同定されていた遺伝子の変異がおおむね確認されたが、これらに加えて、クロマチン制御やエビジェネシスの制御に関わる遺伝子の変異やDNA修復に関わる遺伝子の変異など、従来未報告の多数の新たな遺伝子変異が同定された。本研究により、前年度までの本研究で得られたSNPアレイデータと併せて、AML、MDSおよび関連骨髄系腫瘍の発症の遺伝学的基盤にかんする重要な知見が得られた。今後、全エクソンのみならず全ゲノムを対象としてリシーケンスをさらに多数の腫瘍検体について行うことにより、これらの疾患の分子病態の全体像の解明と診断・治療の有用な分子標的の同定が期待される。
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