研究課題/領域番号 |
20390268
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
尾崎 由基男 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30134539)
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研究分担者 |
井上 克枝 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (10324211)
井上 修 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (00432154)
佐藤 金夫 山梨大学, 医学部, 助手 (20242662)
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キーワード | 血小板 / CLEC-2 / podoplanin / 動脈硬化 / 動脈血栓症 |
研究概要 |
【目的】我々は、ロドサイチンという血小板活性化蛇毒の受容体がCLEC-2であることを見出した。いくつかの腫瘍細胞に発現するポドプラニンという膜蛋白は、血小板凝集を惹起して癌の転移を促進するため、癌転移抑制薬の有望なターゲットと考えられたが、血小板側の受容体はこれまで不明であった。我々は、ポドプラニンの血小板上受容体がCLEC-2であることを見出した。これよりCLEC-2は抗転移薬の標的として注目された。本研究課題ではCLEC-2/ポドプラニンの相互作用が血栓症発症にも関与する可能性を検証する。【方法と今までの経過】研究期間内に1)ポドプラニンは通常の血管内皮に発現しないが、動脈硬化部位での発現の確証、2)生理的なフロー条件下あるいは生体内でのCLEC-2-ポドプラニン相互作用の血栓形成における役割、3)CLEC-2欠損マウスを使用して、CLEC-2自体の生体内での血栓止血における役割、を明らかにする。昨年度、CLEC-2欠損マウスが胎生致死であることが判明し、Mx-Creシステムを使ったコンディショナルノックアウトを作製したが、完全な蛋白欠損が得られなかった。【本年度の成果】そのため、放射線照射マウスにCLEC-2-/-胎仔肝細胞を移植した放射線キメラマウスを作製した。CLEC-2-/-キメラの血小板はロドサイチンに反応しなかったが、それ以外の血小板活性化物質には野生型と同様に反応して活性化され、コラーゲン等の細胞外マトリクスにも野生型と同様に粘着した。しかし、コラーゲン上にフロー条件下で全血を流した際の血栓形成や、レーザー傷害によるin vivo血栓形成はCLEC-2-/-で著しく抑制され、CLEC-2は生体内で血栓の増大や安定化を担っていることが示唆された。さらにそのメカニズムとして、血小板のCLEC-2同士がホモフィリックに結合して血栓を安定化していることを見出した。CLEC-2-/-キメラは出血時間の著しい延長はなく、CLEC-2は、出血傾向の少ない有効な抗血小板薬のターゲット蛋白となる可能性がある。
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