研究課題/領域番号 |
20390269
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松村 到 近畿大学, 医学部, 教授 (00294083)
|
研究分担者 |
芦田 隆司 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (30211006)
辰巳 陽一 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (60236552)
嶋田 高広 近畿大学, 医学部, 講師 (90319674)
|
キーワード | 造血幹細胞 / 遺伝子変異 / 慢性骨髄性白血病 / 活性型チロシンキナーゼ / 増殖シグナル |
研究概要 |
造血幹細胞ヒバルにBCR-ABLの遺伝子変異がおこると慢性骨髄性白血病(CML)を発症し、JAK2V617F変異がおこる真性多血症(PV)を含む骨髄増殖腫瘍を発症する。いずれの分子も活性型チロシンキナーゼとしてSTATs、Ras/MAPK、PI3K/Aktなどの共通したシグナル伝達分子を活性化するが、CMLでは貧血、PVでは多血症となる。本研究では活性型チロシンキナーゼによって異なる病態が引き起こされる分子機能を解析した。マウス骨髄より単離したKIT+Sca-1+Lin-(KSL)細胞にJAK2V617Fを導入すると、赤芽球系、顆粒球系のいずれのコロニー数も増加した。一方、BCR-ABLを導入すると顆粒球系コロニーは増加したが、赤芽球系コロニーは減少した。この機構として、BCR-ABLはJAK2V617Fと比較すると、下流のRas/MAPKをより強く活性化し、Ras/MAPK経路が赤芽球系コロニーの抑制に関わることを明らかとした。さらに、骨髄系コロニーと比較して赤芽球系コロニーのみが減少する理由として、赤芽球系特異的転写因子GATA-1がRas/MAPKの上流分子MEKと直接結合し、Ras/MAPKの増殖シグナルを阻害することを見出した。また、赤芽球系の増殖抑制にはサイクリン依存性キナーゼ阻害分子のうち、p16INK4Aではなく、p21WAF1が必須であることをノックアウトマウスを用いて証明した(J Biol Chem 31774-82, 2010)エネルギー代謝についてはSIRT1のノックアウトマウスの造血幹細胞を単離し、自己複製能が障害されていることをin vitro、in vivoで明らかとした(論文投稿中)。
|