CD34陰性の休眠中の造血幹細胞では無機能なPSF1のshort formが産生され、CD34陽性の一過性分裂期の造血幹細胞では機能的なPSF1のlong formが形成される。PSF1はDNA複製の開始にとって必須であることから、細胞周期活性における、このPSF1の発現制御を明らかにするために、PSF1遺伝子のプロモーター領域においていかなる転写因子の結合様式が変化するのか解明を試みた。まず、PSF1プロモーター領域では、PSF1の第1エクソンの上流5Kbで、PSF1転写活性を誘導するのに十分であることが判明していることから、この5Kbのプロモーター領域を1kbずつ切断した変異プロモーターを作成し、PSF1を恒常的に発現することが判明している、colon26大腸がん細胞、B16メラノーマ細胞および、NIH3T3線維芽細胞株において、プロモーター活性の変化を確認した。その結果、第1エクソンの上流1Kb以内にPSF1プロモーター活性を誘導する領域が存在することが判明した。この領域においてはE2F転写因子ファミリーの結合領域が散在しており、特にE2F1-3の予測結合領域が存在した。これらのE2F1-3の実際の結合を、ChIP解析を行い、E2F1の結合が示唆された。次いで、E2F1分子の遺伝子ノックダウンを行い、上記のcolon26大腸がん細胞、B16メラノーマ細胞および、NIH3T3線維芽細胞株において細胞増殖を解析した。しかし、E2F1ノックダウン単独では細胞増殖に影響がみられなかった。以上からPSF1は様々なE2Fファミリー因子により発現が誘導されている可能性があり、E2F1発現が抑制されても、その他のE2Fが相補的にPSF1の遺伝子転写を制御する可能性が示唆された。
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