研究概要 |
われわれは、7番染色体長腕(7q)よりMDSを抑制する遺伝子の単離と、遺伝子産物の機能解析を進めてきた。候補として単離した四遺伝子(Samd9, Samd9L, LOC253012=Miki, CG-NAP)のうち、Samd9とSamd9Lは共通の祖先遺伝子の重複により生じた関連遺伝子である。ラットを含むほとんどの哺乳類で、Samd9とSamd9Lの双方が存在するが、マウスではSamd9L遺伝子のみが存在する。Samd9L遺伝子欠損マウスを作成したところ、自然経過で1.5歳以上(ヒトでは40~50歳に相当)のマウスの半数以上にMDSを中心とする骨髄性腫瘍が生じた。また、その新生仔期にレトロウイルスを感染させたところ、ほぼ全例が骨髄球系の白血病を発症した。レトロウイルスの挿入部位として、Evi-1転写調節遺伝子とともに、ピストン脱メチル化酵素をコードするFbx110遺伝子が同定された。Samd9、Samd9Lの生化学的機能は不明であったので、遺伝子欠損マウスより樹立した線維芽細胞などを用いて検討したところ、マウスSamd9Lは、初期エンドソーム内にあって、初期エンドソーム同士の融合を促進する機能を持つことが判明した。Samd9Lの欠損によって、初期エンドソームのサイズは大きくならず、後期エンドソームとの融合によるリソソームの形成が阻害された。その結果、リガンドと結合したサイトカイン受容体の分解が遅れ、過剰なシグナルが観察された。このことが、骨髄性腫瘍の発症に関与していると考えられた。われわれは、Samd9遺伝子をその機能に基づいてefi-1(endosome fusion inducer)、Samd9Lをefi-2と名付けることを提唱した。
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