研究概要 |
RUNX1遺伝子は、造血発生や骨髄造血における幹細胞の維持に必須の役割を担う転写因子である。急性白血病や骨髄異形成症候群(MDS)においては、遺伝子座の欠失、染色体転座に伴うキメラ遺伝子の形成あるいは点突然変異によって、その機能が失活していることが知られている。本年度はMDS症例において、 miRNAの異常発現がRUNX1蛋白の翻訳抑制を介してRUNX1の機能を失活させている可能性について検討した。解析の対象としたのはRUNX1遺伝子の3'非翻訳領域に結合する10種類のmiRNA (miR-9、 miR-27a、 miR-27b、 miR-199a、 miR-18a、 miR-30a、 miR-30b、 miR-30c、 miR-30d、 miR-30e)である。 MDS患者16例(RA4例, RAEB9例, RAEB-t2例, CMMoL1例)および正常人11例の骨髄検体よりsmall RNAを抽出し、 Taqman法によりmiRNAの発現を定量した。検討した10種類のmiRNAの中でmiR-9のみに発現変化が観察され、 MDS患者16症例中3例において発現が異常に亢進していた。このMDS3例の病型の内訳はRAEB2例、 RA1例であった。次に、 miR-9がRUNX1蛋白の翻訳を負に制御するかどうかをレポーター・アッセイにより検討した。 RUNX1mRNAの3'非翻訳領域をルシフェラーゼ遺伝子の翻訳領域の下流に接続したレポーター・プラスミドを作製し、 miR-9とともに293細胞にコトランスフェクションした。また、 miR-9結合部位の欠失変異体レポーターも作製して同様の検討を行なった。その結果、 miR-9の導入はmiR-9結合部位依存性にレポーターの活性を50%以下に低下させることが明らかになった。以上の結果より、 miR-9の過剰発現がRUNX1蛋白の翻訳抑制を介して、 MDSの発症や進展に関与している可能性が示唆された。
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