研究概要 |
RUNX1遺伝子の機能的失活は急性骨髄性白血病(AML)の重要な発症機構である。RUNX1蛋白の翻訳を阻害する可能性のあるmicroRNA(RUNX1関連miRNA : miR-27a, miR-27b, miR-9, miR-199a, miR-18a, miR-30a, miR-30b, miR-30c, miR-30d, miR-30e)の発現をTaqman法により定量するとともに、その臨床的意義を検討した。本研究は施設の倫理委員会で承認されており、検体供与者からは文書による同意を得た。予備実験として、急性リンパ性白血病及び混合性白血病を含む33例の急性白血病の骨髄検体について解析を行なった所、ほとんどのRUNX1関連miRNAは症例毎に発現レベルにばらつきはあるものの、正常及び急性白血病検体において発現が確認された。一方、miR-9は正常骨髄ではほとんど発現しておらず、急性白血病骨髄では3例に過剰発現が観察された。そこで、87例のAML検体でさらに解析した所、約2割の検体で過剰発現が観察された。正常人骨髄で見られる発現レベルをカットオフ値として、miR-9の発現の有無で2群に分類したところ、16例(約18%)が陽性、71例(約82%)が陰性と判定された。臨床データを照合した所、miR-9発現陽性AMLは陰性AMLに比して寛解率に差は認めなかったものの、全生存が統計学的有意差をもって不良であることが明らかになった。miR-9にはRUNX1以外の標的mRNAが存在する可能性があるが、その過剰発現は白血病発症のひとつの分子機構であると考えられた。
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