1.ゲノム異常領域の解明と責任遺伝子の単離: 眼付属器MALTリンパ腫に高頻度に認められる6q23.3欠失領域の責任遺伝子がTNFAIP3/A20であることを明らかにし、その後、他の病型の悪性リンパ腫にも高頻度に認められることを明らかにした。特に、マントル細胞リンパ腫(31%)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のうちABC型(50%)に多い。これらは、NF-κBの活性化が起こっている可能性が高い。NF-κB活性化とのTNFAIP3欠失の相関について、免疫染色などによる症例での蛋白レベルでの検討が今後の課題である。 2.責任遺伝子の細胞の増殖分化およびアポトーシスにおける役割の解明: TNFAIP3の腫瘍化における役割を解明する第一歩として、実験的にTNFAIP3をノックダウンすることで、その腫瘍化における役割を調べた。EBウイルス不死化B細胞株(かなり正常に近いと考えられる)を用いて、TNFAIP3をノックダウンしたところ、NF-κB活性化がおこり、抗アポトーシス機能も増強することが明らかとなった。また、TNFAIP3欠失リンパ腫細胞株にTNFAIP3を発現させるとNF-κBが抑制され、アポトーシスが誘導された。これらは、TNFAIP3の欠失が腫瘍化に有利に働くことを示している。起こった。正常リンパ造血器細胞に対する機能を調べるために、CD40 ligandを発現するfeeder細胞やサイトカインを用いた長期正常リンパ造血器細胞培養系を確立をこころみたが、一ヶ月程度で増殖が停止した。この培養系は正常細胞を用いる点で腫瘍化機能を調べるためには最適であり、今後も努力を続ける必要がある。
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