研究概要 |
本研究課題のもっとも大きな成果は、眼付属器MALTリンパ腫の特徴的な6q23.3欠失領域の責任遺伝子TNFAIP3/A20を見いだしたことであるが、その後の解析でMALTリンパ腫だけではなく、マントル細胞リンパ腫やABC型びまん性大細胞型リンパ腫にも認められるということを見いだしたことは大きな意義がある。すなわち、TNFAIP3は病型の決定に決定的には関与しないことが明らかになったことである。TNFAIP3遺伝子の欠失は結果的にNF-kappaBの活性化が関与することが想定されるし、実験的にもそれを証明してきた。今年度はNF-kappaBの活性化を起こす状況をEBVウイルス感染不死化細胞に導入し、そのコロニー形成能を増強させる遺伝子の単離を試みた。また、マウス長期培養系を用いてこの遺伝子を導入し、発現ライブラリーをさらに感染させ、造腫瘍能を検討した。まず、IKKCA mutantを作成し、細胞株に導入し、NF-kappaBの活性化が起こることを確認した。本遺伝子単独導入細胞にライブラリーを感染させ、検討したが、現時点ではin vitro並びにin vivoで造腫瘍能の確認はできていない。今後は、IKKCA mutantに加えて、B細胞性の転座関連遺伝子、BCL2, MYCなどを動時に導入し、検討する必要が有ると考えている。今後の研究課題としては、ウイルス不死化細胞ではない細胞を用いる実験系を作成することが必要であることが一連の研究の成果により示唆された。具体的には、CD40を発現するNIH3T3細胞を用いて、正常B細胞を培養すると、1-2ヶ月の間、増殖が認められることを確認できたし、正常NK細胞を増殖させる系も確立しつつあるので、マウスのみ成らずこれらの細胞を用いた実験を検討することが重要であると考えている。
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