関節リウマチは、関節を主病巣とする病因不明かつ難治性の炎症性疾患である。近年、サイトカインを標的とした生物学的製剤の有効性が認められているが、病因理解に基づいた根本的治療法の確立には至っていない。本研究では、関節リウマチにおける新しい治療標的を探索するために、蛋白質翻訳後修飾の差異を指標とした関節リウマチ患者滑膜細胞の網羅的解析<翻訳後修飾プロテオミクス>を実施した。特にリン酸化を指標とした探索で、関節リウマチで高レベルにリン酸化されている分子を複数同定し、さらにその中から、実験的関節炎であるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)抵抗性のC57BL/6マウスを、遺伝子導入により、CIA感受性に変えることのできる分子<アネキシン7>を同定している。平成21年度は1)このアネキシン7-トランスジェニックC57BL/6マウスにおけるCIAが抗アネキシン7抗体投与で抑制されること、2)関節炎治療研究で汎用される野生型CIA感受性マウスDBA/1Jにおいても、CIAが抗アネキシン7抗体投与で抑制されることを証明し、アネキシン7が関節リウマチの治療標的となりうることを示した。さらに、3)抗アネキシン7抗体の作用は、IL-6、TNF-αなど現在、生物学的製剤の治療標的となっているサイトカインの血中濃度変化を伴わないことを証明し、アネキシン7はサイトカインとは独立した治療標的となりうることも示した。今後、平成21年度に示されたアネキシン7の起関節炎機序と抗アネキシン7抗体の関節炎抑制機序を分子生物学的に解明することに注力する必要がある。
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