研究概要 |
MR1拘束性T細胞は、可変性の限られたT細胞受容体(TCR)を有し、炎症病変に集積してサイトカインを産生するMHCクラスIb分子であるMR1拘束性のユニークなリンパ球である。本年度は、MR1拘束性細胞が他の自己免疫病態において制御性細胞として機能するかどうかを検討するために自己抗体惹起性の炎症である抗体誘導関節炎ならびにコラーゲン関節炎に与える影響を調べた。DBA1Jマウスに6回戻し交配したMR1^<-/->F6マウスでは、CIA発症率,最大スコアともに、野生型DBA1Jマウスに比較してMR1^<-/->マウスで有意に高値であった。これは、同腹の野生型マウスを用いても同様の結果が得られた。病理所見でも、MR1^<-/->マウスでは、関節炎がより顕著であった。CIIに対するリコール反応におけるIL-17産生、血清中抗CII抗体価はB6に比較してMR1^<-/->で低値であった。一方、CIIカクテル抗体関節炎ならびにK/BxN血清移入関節炎ではMR1^<-/->マウスにおいてコントロールB6マウスと比較して関節炎が抑制された。関節局所における炎症性サイトカインの発現も、MR1^<-/->マウスでは有意に低かった。In vitroにて、Vα19iNKT細胞をセルソーターを用いて分離し、各種サイトカイン存在下で抗CD3抗体刺激によるサイトカイン産生を検討したところ、IL-1共存下でIL-17産生が増強した。以上のことから、MR1拘束性Vα19i T細胞はコラーゲン関節炎ならびに抗体誘導関節炎の炎症増悪に関与する可能性が示唆された。関節炎では、IL-1を初めとした炎症性サイトカインが大量に産生されていることから、強い炎症局所ではVα19i T細胞は炎症の増悪因子として機能すると考えられた。
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