試験管内で異常型プリオンタンパク(PrP^<Sc>)を増幅する方法によりプリオン病の診断法への応用が模索されているが、クロイツフェルトヤコブ病(CDI)を始めとするヒトのプリオン病での高感度なPrP^<Sc>検出の成功例は報告されていない。本研究ではヒトプリオン病に適応可能な試験管内異常型プリオンタンパク増幅法を新規に開発し、それを用いてCJD患者由来髄液中に含まれるごく微量のPrP^<Sc>を増幅することにより、CJDの生前確定診断法を確立することが目的であった。我々は、前年度までに高感度試験管内異常型プリオンタンパク増幅法であるreal-time QUIC法(RT-QUIC法)を確立することに成功した。今年度は実際のCJD患者由来髄液中の異常型PrPを増幅し検出可能かどうか検討した。その結果日本でのCJD確定症例由来髄液18例中15例で陽性であった一方、非CJD症例由来髄液35例すべてが陰性であった。さらにオーストラリア、メルボルン大学との共同研究により提供された30例の髄液について盲検試験を行ったところ、CJDは14/16で陽性、非CID髄液ではすべて陰性であった。日本での症例での感度は83.3%、特異度は100%、一方オーストラリア症例での盲検テストでは感度は87.5%、特異度は100%であった。この結果はこれまでCJDの髄液マーカーとして用いられている14-3-3タンパクを感度では同等、特異度では上回るものである。またRT-QUIC法が髄液中のPrP^<Sc>を増幅して検出する方法であることからCJDの診断的意義は非常に高いと考えられる。これらの結果から、RT-QUIC法はCJDの診断に有用性が高く、特に生前の確定診断が髄液検査により可能となったと考えている。
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