研究概要 |
我々は試験管内でDRVの研究を続けており、複数の多剤耐性臨床分離HIV-1混合株を用いた耐性誘導実験により、複数のPI耐性変異株の重感染と遺伝子相同組み換えが起こる事で、HIV-1がDRVへの高度耐性を比較的早期に獲得し得る事を報告した(Koh, Amano & Mitsuya et al. JV, 2010)。また米国グループと共同で、macrocyclic構造を有し薬剤耐性株に対し高い活性を発揮する一連の化合物、GRL-0216A等を同定、同構造がPR flap領域に広範に作用し強力な活性を発揮する事を報告(Tojo, Amano & Mitsuya et al. AAC, 2010)し、更にTp-THFを有するGRL-1388A,-1398Aを同定、DRV高度耐性株を含む薬剤耐性株に対して強力な活性を発揮する事を確認、同化合物群に対するHIVの耐性獲得機序を検討し、構造解析により1398AはDRVと比しPRとの相互作用をより多く有し得る事を報告した(Ide, Amano & Mitsuya et al. AAC, 2011)。更にtris-THF構造という新規構造を有し、DRV高度耐性株を含む薬剤耐性株に対しbroad-spectrumかつ極めて高い抗ウイルス活性を維持、またDRVより低濃度でプロテアーゼ二量体化阻害(PDI)活性を発揮する新規化合物、GRL-0519Aを同定・開発し(Ghosh, Amano & Mitsuya et al. ChemMedChem, 2010)、結晶構造解析を含む同化合物の詳細な検討を行い、tris-THF構造においてbis-THF基がPR活性中心部位のアミノ酸主鎖と強固に結合する事に加え、3番目のTHF基がPRのflap、catalytic core、dimer interfaceと相互作用を有し得る事を確認、同化合物の強力なPR酵素活性阻害能およびPDI能に寄与するものと推測した。
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