研究概要 |
本研究者らは2005年にHRASの生殖細胞系列での変異を先天奇形症候群であるCostello症候群で同定した(Nature Genetics, 2005)。また2006年には、carcio-facio-cutaneous (CFC)症候群の原因がKRAS,BRAFの遺伝子変異が原因であることを報告した(Nature Genetics, 2006)。これらの発見が契機となり、RAS/MAPKに異常を持つ先天異常症という新しい疾患概念が確立した。本研究の目的はヌーナン・コステロ・CFC症候群患者の病因としてこれまでに同定された7個の遺伝子の網羅的遺伝子解析を行い、その分子診断結果と詳細な臨床的検討を元に疾患概念を再構築することが第一の目的である。またこれらの結果を踏まえたうえで、新規病因遺伝子を同定し、これら類縁疾患における遺伝子診断システムを確立することが第二の目的である。 これまでに、ヌーナン症候群とその類縁疾患の検体は400件以上を収集した。平成20年の新規検体は41例であったが、平成22年度は74例と倍増した。また、新たな病因遺伝子が追加されて10個と数が増えたため、そのスクリーニングには時間がかかるようになった。そこで、今年度は類縁疾患の頻度の高いエクソンのスクリーニングができるようなセット検査を考案し、それを用いて遺伝子診断を行った。次に、RAF1およびSHOC2遺伝子の解析を行い、それらの遺伝子変異陽性患者の臨床症状を詳細に検討するとともに、RAF1変異がどのようなメカニズムで下流のシグナル伝達経路を活性化しているかを明らかにした(Kobayashi et al. 2010, Komatsuzaki et al. 2010)。また、新規病因遺伝子の候補を同定したが、今後その検証が必要と考えられる。
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