研究課題
IDH1およびIDH2遺伝子は、クエン酸回路に関わる酵素で、イソクエン酸からα-ketoglutarateへの変換を司る。近年、ゲノムワイドな手法により神経膠腫のうち、70%でこれら2つの遺伝子のいずれか一方が変異していることが明らかになった。これらの変異により,IDH1とIDH2蛋白の酵素活性が低下もしくは失われることが腫瘍の発症に関与すると推定されている。またその後、成人の急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)においても高率に、IDH1,IDH2の変異が報告され、予後と相関することが明らかとなった。一方、小児悪性腫瘍の発症・進展におけるIDH1/2の関与は明らかではない。そこで、小児悪性腫瘍の発がんにおけるIDH1, IDH2の関与を明らかにするために代表的な小児悪性腫瘍である、白血病、神経芽腫、横紋筋肉腫、Ewing肉腫、脳腫瘍、肝芽腫、ラブドイド腫瘍計618検体におけるIDH1/2の変異解析ならびに変異蛋白の機能解析を行った。その結果、造血器腫瘍では、肌の新鮮腫瘍1症例でIDH2のR140Q変異が認められた。固形腫瘍では、IDH1の変異を計3検体(神経芽腫の2例、Ewing肉腫1例)に、またIDH2の変異を計4検体(神経芽腫1例、Ewing肉腫1例、横紋筋肉腫細胞株1株および神経膠腫細胞株1株)に検出した。固形腫瘍で検出された変異は全てこれまでに報告のないものであり、神経芽腫でみられたIDH1のframeshift mutationであるD143Xはgermlin変異であることが確認された。以上の結果より、小児悪性腫瘍における、IDH1/2の変異は成人の造血器腫瘍や脳腫瘍に比べて頻度が少ないものの、一部の腫瘍の発症・進展に関与している可能性が示唆された。
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