研究概要 |
急性脳症のリスクファクターとして示唆されている遺伝子群の中でカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT II)と、アデノシンA2a受容体(ADORA2a)の遺伝子多型を解析した。 1.CPTIIについで 急性壊死性脳症10例、痙攣重積型脳症19例(年齢7ヶ月~8才5ヶ月、男19人女10人)の計29例のCPTIIのジェノタイピングを行った。有意差検定はFisher's exact testを用いた。SNPによって患者、対照ともにFVM,FIM,CIMのアリルの組み合わせを示した。CIMを少なくとも1本持つ頻度、CIMのアリル数、FV,FI,CIのアリル頻度の比較ではp値がそれぞれ0.038,0.029および0.027で有意差が認められた。CIMアリルはFIM,FVMと比較し37℃においてもミトコンドリアへ脂肪酸を取り込むCPT II活性が約1/3(Chenら)であり、このアリルを少なくとも1本持つ事は急性脳症のリスクファクターのひとつである可能性が示唆された。 2.ADORA2aについて けいれん重積型急性脳症3例、けいれん重積2例においてADORAA2aの4箇所のSNP遺伝子型で5例中4例は一致し、すべてヘテロ接合を示した。対照50例でこの遺伝子型頻度は26%であった。3つのSNPはヘテロ接合を中間として一方のホモ接合で最も弱く、他方のホモ接合で最も高いカフェイン感受性を示す。患者1例は3つのSNPともすべて感受性の高いホモ接合を有していた。さらにrs2298383は転写因子の結合部位の可能性が示唆されており、対照では最も感受性の低いT/Tが48%を占めるが患者5例にはT/Tは見いだされなかった。
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