研究課題
われわれの臓器には、組織特異的な幹細胞が存在し、それぞれの臓器の再生・維持を担っている。この組織幹細胞を活用した種々難治性疾患に対する再生医療の構築が模索されている。しかし、組織幹細胞の体内における動態・体外における人為的制御に関する知見は不足している。多くの臨床的実績を積み上げてきた造血幹細胞においてさえも、それらの知見を駆使した安定した造血幹細胞の供給には至っていない。また、造血幹細胞に由来する安全な赤血球、血小板、好中球等の作成基盤技術開発が試みられているが、その実現には解決すべき問題が山積している。さらに、ヒトにおいては、神経幹細胞のように、入手が困難な組織幹細胞が多く存在し、研究の糸口をつかむのにさえ難渋しているケースもあり、有効性、安全性の担保を必要とする再生医療の構築には困難を伴なっている。このような状況の中、近年マウスにおいて、体細胞よりES細胞に匹敵する多分化能、自己複製能を有するiPS細胞の作成が報告された。このiPS細胞を用いた再生医療の構築は、社会的、倫理的な問題をクリアーした形で、患者さん個人に特化したヒトES様細胞の使用が可能となり、その展開には、国内外より大きな注目と期待が寄せられている。平成21年度においては、マウスips細胞よりの知見をもとに、ヒトips細胞から造血細胞、免疫細胞の作成について評価を行ってきた。その結果、マウスiPS細胞とほぼ同様の手法にて、造血・免疫細胞が作成できることを明らかにした。今後、その機能評価を行い、疾患特異的iPS細胞における病態の再現の可否について研究を進めていく。
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FASEB J (in press)
FASEB J 23
ページ: 1907-1919