研究課題/領域番号 |
20390299
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 孝雄 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80171495)
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研究分担者 |
小崎 健次郎 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (30234743)
三橋 隆行 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80338110)
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キーワード | エピジェネティクス / 大脳皮質発生 / 神経前駆細胞 / マウス / 細胞周期 / ヒストン脱アセチル化 |
研究概要 |
本研究ではエピジェネティクス機構、特にクロマチン構造を制御するヒストン脱アセチル化酵素が、大脳皮質を構築する神経前駆細胞の細胞周期調節機構に果たす役割を解明する。具体的にはヒストン脱アセチル化酵素を神経前駆細胞に特異的に、かつ発生時期特異的に強制発現させることのできるマウスを作成、ヒストン脱アセチル化酵素Sir2強制発現により神経前駆細胞に惹起される細胞分裂動態の変動、結果として大脳皮質の組織学的構築に生じる異常を解析する。 本年度は昨年度作成したTRE-Sir2トランスジェニックマウスを用いて以下の実験を行った。TRE-Sir2トランスジェニックマウスと、nestin陽性神経前駆細胞特異的にテトラサイクリン強制発現システムの調節タンパク質rtTAを発現するトランスジェニックマウス(nestin-rtTA)とを交配し、両遺伝子を持つダブルトランスジェニック胎仔を持つ母親マウスにドキシサイクリンと対照としてのPBSを胎生14日午前9時より12時間おきに投与した。胎生16日目にS期特異的トレーサーであるBrdUを午前9時より2、5、8、12、17時間、3時間おきに連続曝露した。胎児脳室帯に存在する神経前駆細胞の内、BrdUを取り込んだ細胞の比率(BrdU labeling indices,LI)を計測した結果、2、5時間BrdU曝露群においてSir2強制発現群のLIが対照群と比較して増加していた。一方8、12、17時間BrdU曝露群では対照群と比較してLIに変化を認めなかった。以上から、Sir2強制発現により神経前駆細胞の細胞分裂動態に変動をきたしうることをin vivoで初めて示すことができた。また本トランスジェニックマウス系では、導入遺伝子の強制発現がドキシサイクリン投与後約8時間後に消失することが示唆された。
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