研究課題
胎生期の発がん要因として遺伝因子の関与は無視できない。最終年度は高発がん性を呈する常染色体劣性遺伝疾患毛細血管拡張性小脳運動失調症(AT)に注目した。AT患者の約1割はリンパ性腫瘍になることが知られており、Atm遺伝子のノックアウトホモ接合体マウス(Atm-/-マウス)は高頻度にT細胞性リンパ腫を発症して死に至ることから、ArMはリンパ性腫瘍の発症において重要な役割を担っていると考えられている。ATM遺伝子異常のヘテロ保因者は2-3万人に一人とされる。マウスモデルを用いてリンパ性腫瘍易罹患性の解析を行った。Atm遺伝子のノックアウトヘテロ接合体マウス(Atm+/-マウス)を用いた実験系では、リンパ性腫瘍との関連性を示唆する報告が未だになされていない。今回我々は慢性骨髄性白血病のモデルマウスであるBCR-ABL1(p210)トランスジェニックマウス(BCRABLTg/-)とAtm+/-マウスを交配させ、Atm+/+BCR-ABLTg/-およびAtm+/-BCRABLTg/-を作製し、腫瘍発症能を比較検討した。その結果、CMLの急性転化を想起させるようなT細胞性リンパ腫の発症が、Atm+/-の遺伝的背景によって加速・悪化することが判明した。FACS解析の結果、その腫瘍の免疫学的特徴はγδ+CD3+であり、CD4/CD8ダブルネガティブであった。本研究成果はBCR-ABL1による発がん過程においてATM遺伝子のハプロ不全が腫瘍感受性を修飾する可能性があることを示唆するものであり、腫瘍感受性決定における遺伝的背景研究のモデルとして注目すべき知見と考えられる。
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