研究概要 |
本研究の目的は、動脈管が酸素を感受して収縮する機構のシグナル伝達系を解明することである。本研究においては、動脈管における1)Kチャネル、2)小胞体、3)筋原線維のCa感受性、を制御するシグナル伝達系の構成タンパク質群を質量分析計TOF/MSを含めたプロテオミクス手法を用いて解明し、肺動脈と比較する。本年度の研究目標は膜電位依存性Kチャネル(Kv)複合体の抽出・精製法の確立である。 1.Kv抗体の調製とそのビオチン標識 モノクローナル抗体の作成を目指し、GST結合Kv1.5(N末103アミノ酸、C末80アミノ酸)をマウスに投与したところ血清には抗体が出現したが、モノクローナル抗体は得られなかった。そこで、家兎に同抗原を免疫し、ポリクローナル抗体を得、アフィニティ精製およびビオチン化に成功した。 2.Kvの抽出・分離法の検討 平滑筋細胞は遺伝子導入率および発現量が低く、Kvを安定発現するラインが得られなかったため、HEK293細胞を用いた。Kv複合体の抽出条件を各種界面活性化剤(DDM, digitonin, Triton X-100など)について検討し、結局0.5% DDMおよび0.25%digitoninを含む緩衝液を抽出に用いた。抽出した複合体はBlue-native/SDS PAGE2次元電気泳動により分離した。ブタ大動脈・肺動脈に本抽出法を適用し、Kv1.5およびその複合体構成蛋白質を見つけた。 3.TOF/MS試料の調製と測定 一連のTOF/MS試料の調製と測定、mascotによる検索法に習熟した。現在、前項に記載したKv複合体の構成蛋白質を同定中である。 4.酸素による修飾 妊娠家兎から胎仔動脈管および肺動脈を採取し、低濃度又は高濃度酸素飽和緩衝液中で培養し試料とし解析を実施している。本年度は、細胞および血管試料についてKv複合体の抽出・精製法を確立することができた。
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