本研究の目的は、動脈管が酸素を感受して収縮する機構のシグナル伝達系を解明することである。酸素は動脈管平滑筋細胞の酸化還元状態や活性酸素濃度を変えて、1)細胞膜表面のカリウム(K)イオンチャンネルを閉じ、脱分極を起こし、カルシウム(Ca)チャンネルを開き、細胞内Ca濃度を増加させる、2)細胞内小胞体からのCaイオンの放出を増加させる、3)Rho kinase活性化を介し筋原線維のCa感受性を増加させる、ことにより動脈管を収縮させる。動脈管におけるこれら3つの酸素の作用は、いずれも、肺動脈における作用とは反対である。本研究では、動脈管における1)Kチャネル、2)小胞体、3)筋原線維のCa感受性、を制御するシグナル伝達系の構成タンパク質群を質量分析計TOF/MSを含めたプロテオミクス手法を用いて解明し、肺動脈と比較する。動脈管の酸素感受機構が明らかになれば、胎児、新生児の動脈管に関わる疾患に対する新しい治療法につながる。
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