研究課題/領域番号 |
20390306
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
島田 眞路 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (10114505)
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研究分担者 |
柴垣 直孝 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (40262662)
川村 龍吉 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (70262657)
原田 和俊 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (20324197)
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キーワード | 悪性黒色腫 / ワクチン / 免疫抑制 / 樹状細胞 / 治療 |
研究概要 |
我々は腫瘍塊を物理的に破壊させることだけで抗腫瘍効果が期待できるかを検証するため、電気的にB16担癌マウスの腫瘍塊を焼却した結果、生存率は何も治療しないB16担癌コントロールマウスに比べ低下してしまうことを明らかにした。また、過去我々は悪性黒色腫が発現する自己抗原を癌ワクチン療法に利用し、B16担癌マウスに自己抗原でパルスした樹状細胞を接種したが劇的な抗腫瘍効果は得られなかったことを確認した。そこで最近我々が報告したR9-PTD含有外来抗原(OVA)を皮膚に接種することで、OVAに対する強いTh1,Tc1の免疫誘導と、接種局所での好中球、組織球、リンパ球浸潤を伴う強いOVA特異的炎症反応が誘導される手段を利用して、R9-OVAタンパクをB16担癌局所に接種した場合にどのような抗腫瘍効果が誘導されるかを検討することにした。その結果免疫原性の高いR9-OVAタンパクをB16担癌腫瘍塊に3日おきに数回接種すると腫瘍塊の縮小および消失が確認された。この組織を病理組織学的に解析すると腫瘍局所には腫瘍細胞の破壊断片と超密な好中球、組織球の他CD4,CD8陽性リンパ球の浸潤を認めた。また、このR9-OVA接種によるB16腫瘍塊の抗腫瘍効果はCD8陽性細胞を抗体により除去すると認められなくなることより、CD8陽性T細胞が直接傷害性をきたしていることが確認された。興味あることにこのB16拒絶マウスのin vitroでのCTL活性を解析した結果、B16細胞に対するkilling activityが誘導されていることが確認された。さらにB16細胞をマウスの両腹部皮内に同時に接種して腫瘍塊を形成させた後に、片方のみにR9-OVAを数回腫瘍内接種すると、接種側の腫瘍塊の縮小消失のみならず、遅れて反対側のB16腫瘍塊の増殖抑制効果が確認された。これらの結果は本来免疫原性の高いメラノーマ腫瘍塊の局所に外来抗原により強力な炎症性免疫反応(アジュバンド効果)を惹起させると、二次的に癌抗原に対する免疫反応が惹起されるAntigen-spreading効果が誘導されることを示唆している。この方法でのB16担癌宿主に対する拒絶効果はまだ完全ではないため、この拒絶効果をさらに向上させるための手段として腫瘍塊局所でのSTAT3阻害薬との併用による相乗効果を現在検討中である。
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