研究概要 |
【背景と目的】悪性黒色腫を免疫反応で治療する試みは多数報告されているが、標的となる腫瘍関連抗原は自己抗原であることが多いため、強力な免疫反応が誘導され難い。そこで、最近我々が報告したR9-PTD含有外来抗原(OVA)を皮膚に接種することで、OVAに対する強いTh1,Tc1の免疫誘導と、接種局所での好中球、組織球、リンパ球浸潤を伴う強いOVA特異的炎症反応が誘導される手段を利用して、R9-OVAタンパクをB16担癌局所に接種した場合の抗腫瘍効果について検討を行った。 【結果】R9-OVAタンパクをB16担癌腫瘍塊に3日おきに数回接種すると腫瘍塊の縮小および完全消失が確認された。無治療のB16担癌マウスの所属リンパ節にはFoxp+CD4+リンパ球(iTreg)が増加していたが、rR9-OVA接種B16担癌マウスのリンパ節にはiTreg細胞の増加は認められず、CD154+,Tim3+(Th1 subset)CD4+リンパ球の増加と、OVA-,B16-specific CTLが確認された。また、B16完全拒絶マウスをB16細胞でrechallengeしたところ、腫瘍の増殖遅延効果を認めた。 【考察】これらの結果は、本来免疫原性の高いメラノーマ腫瘍塊の局所に、外来抗原により強力な炎症性免疫反応(アジュバンド効果)を惹起させると、二次的に癌抗原に対する免疫反応が惹起されるAntigen-spreading効果が誘導されることを示唆している。
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