研究概要 |
統合失調症や気分障害における意欲症状の脳基盤を解明するために、健常者や精神疾患患者を対象として頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)装置を用いて大脳皮質の賦活反応性を検討した。(1)言語流暢性課題において、自覚的な軽度の眠気が前頭葉背外側面の内側部における賦活反応性と負の相関をすることを示し、高次脳機能の軽度の変化がNIRSデータに反映されることを明らかにした(Neurosci Res 60:319,2008)。(2)同じ言語流暢性課題において、自覚的な疲労感は前頭葉腹外側面の賦活反応性と負の相関を、検査前夜の睡眠時間が前頭葉背外側面の賦活反応性と負の相関を示し、眠気と疲労感の自覚はそれぞれ前頭葉背外側と腹外側によって担われることを明らかにした(Brain Res 1252:152,2009)。(3)統合失調症において言語流暢性課題における前頭部の賦活反応姓が機能の全体的レベルGAFと負の相関を示し(Schizophr Res99:250,2008)、その賦活反応性の程度はσ1受容体(Prog Neuropsyehopharmacol Biol Psyehiatry 33:491,2009)やcatecholamine-O-methyl transferase(COMT)の遺伝子多型と関連することを明らかにした(PLoS ONE,in press)、(4)以上の結果から、fMRIやPETにおいてはアーチファクトのために測定の信頼性が低いとされる前頭極部frontal pole(Brodrnann 10野)についてNIRSの測定が可能であり、前頭極部の賦活反応性は意欲症状と密接な関連があること、その個人差には神経細胞で発現している遺伝子の多型の影響を受けることが明らかとなった。
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