研究概要 |
統合失調症や気分障害における意欲症状の脳基盤を解明するために、健常者や精神疾患患者を対象として頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)やMRI装置を用いて大脳皮質の賦活反応性や脳構造について検討を行なった。(1)言語流暢性課題において、自覚的な疲労感は前頭葉腹外側面の賦活反応性と負の相関を、検査前夜の睡眠時間が前頭葉背外側面の賦活反応性と負の相関を示し、眠気と疲労感の自覚はそれぞれ前頭葉背外側と腹外側によって担われること(Brain Res1252 : 152, 2009)、(2)同じ言語流暢性課題において、摂食障害におけるダイエット心理が右前側頭領域の低賦活と、食行動異常が左前頭眼窩領域の低賦活と関連すること(J Psychiatr Res, in press)、(3)統合失調症において言語流暢性課題における前頭極部の賦活反応性の程度がCOMTやσ_1受容体の遺伝子多型と関連すること(PLoS ONE e5495, Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 33 : 491, 2009)、(4)会話時の脳賦活がTCIで評価した協調性と関連すること(Neuropsychologia, in press)、(5)幼小児期の養育環境が背外側前頭前野の脳体積と関連すること(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, in press)、などを明らかにした。以上の結果から、健常者における意欲や精神疾患患者で認められる意欲症状が、前頭葉の賦活反応性や体積と関連していることが明らかとなった。
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