研究課題
病型・罹病期間・抗精神病薬の服薬量・死後時間などの臨床プロフィールが明らかな邦人死後脳サンプルを使用し、質量顕微鏡法による解析を実施した。平成22年度にも質量顕微鏡法を用いて、統合失調症の死後脳の解析を、特定の物質のみを観察するのではなく、統合失調症死後脳サンプルに含まれる脂質を網羅的に測定した。症例を絞って解析を進めることにより、具体的に変動のある物質の同定が進み、今後の統合失調症の病態研究の突破口を開くことができた。今回の研究成果により、ヒト死後脳マップの作成、バイオマーカーの探索など診断・創薬の可能性を拡大する有力な手がかりを得ることができた。本研究の成果をもとに、脂質代謝酵素の同定を進めることで、統合失調症の病態仮説として中心となっているドパミン・グルタミン酸・ギャバ系を結ぶ代謝経路の病態を可視化していく展望が開けた。これらの成果については、第32回日本生物学的精神医学会で学会に発表した。今後のブレイクスルーにつながる方法論として、査読付きの学術誌であるAnalytical and Bioanalytical Chemistryに研究成果が掲載された。その他、第22回福島県精神医学会には実際の症例の経過を交えた病態の考察について学会報告を実施した。本研究により、統合失調症病態の鍵となる分子や治療標的分子の同定に焦点が結ばれつつあり、診断・創薬の可能性を拡大する可能性に加えて将来的には、テーラーメード遺伝子治療を含めた発症予防まで幅広い発展、展開が期待できることとなった。
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Analytical and Bioanalytlcal Chemistry
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