研究概要 |
動脈硬化モデル動物としてこれまでの研究で用いてきたApoEノックアウトマウスおよびコントロールとしてwild typeのマウスを利用して、動脈硬化の程度を適切な放射性薬剤の集積と病理組織学的な所見との対比を行い、核医学的手法でどの程度動脈硬化病変の性状を把握できるかを検討した。用いた放射性薬剤は動脈壁の炎症細胞活性を反映するとされるF-18標識デオキシグルコース(FDG)と、血管内のアポトーシスを反映するとされるTc-99m標識アネキシンA5(アネキシン)の2種類である。2種類のマウスに高脂肪食を長期間与え、10週、18週、25週目の種々の進行度の動脈硬化病変に対して、放射性薬剤の集積程度と組織学的対比を行った。その結果、コントロールマウスでは正常な食事では組織学的な動脈硬化病変は全く見られなかった。同じモデル動物に高脂肪食を与えた場合には動脈硬化病変がみられ、放射性薬剤の集積増加を伴っていた。もっとも顕著な所見を呈したのがApoEノックアウトマウスに高脂肪食を与えた場合で、期間が増加するほど、大動脈壁におけるOil red染色の染色が増加、マック2染色で見られるマクロファージも増加し、それに伴いFDGとアネキシンの集積が増大した。またFDGとアネキシンの集積は病理組織で得られる動脈硬化の面積とそれぞれr=0.40(p=0.03), r=0.46(p=0.02)の有意な正の相関がみられた。以上より、FDGやアネキシンを用いた映像法により、高脂肪食を与えた動脈硬化マウスモデル動物において動脈硬化病変の重症度を判定できることが示された。
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