研究概要 |
炎症を伴う不安定動脈硬化病変を陽性に映像化する方法を実験動物において検討してきた。モデル動物とし高脂肪食を与えたApoEノックアウトマウスおよびコントロールとしてwild typeのマウスを利用した。動脈硬化の程度を適切な放射性薬剤の集積と病理組織学的な所見との対比を行ってきた。用いた放射性薬剤は動脈壁の炎症細胞活性を反映するとされるF-18標識デオキシグルコース(FDG)と、血管内のアポトーシスを反映するとされるTc-99m標識アネキシンA5(アネキシン)の2種類である。今年度はこの2種類の放射性薬剤においてどのような相違があるかの観点に基づいて検討した。その結果、動脈硬化病変への集積はFDGがアネキシンに比べて約5-7倍の高い集積を示していた。またコントロールでも同様にFDGの比較的高い集積を示した。そこでコントロール領域に対する相対的な集積比を検討した。動脈硬化の進展と共にFDGもアネキシンも相対集積は増加したが、Oil Red Oによる脂肪染色と対比すると、FDGに比べてアネキシンの方がより高い相関が得られた(それぞれ相関係数r=0.56,r=0.64)。このことから動脈硬化の進展と共にFDGに比べてアネキシンの方が相対的集積度を増す傾向があることが示された。以上の結果より、動脈硬化病変の活性度を映像化する方法としてFDGやアネキシン共に有効であるが、両者を詳細に対比すると、病変への集積度の高いFDGは病変の検出能に優れるのに対し、高度な動脈硬化病変に対してより高い相対的な集積を示すアネキシンは、動脈硬化病変の重症度の判定に優れる可能性が示された。
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