研究概要 |
炎症を伴う不安定動脈硬化病変を陽性に映像化する方法を実験動物において検討してきた。モデル動物として高脂肪食を与えたApoEノックアウトマウスおよびコントロールとしてwild typeのマウスを利用した。動脈硬化の程度を適切な放射性薬剤の集積と病理組織学的な所見との対比を行ってきた。用いた放射性薬剤は動脈壁の炎症細胞活性を反映するとされるF-18標識デオキシグルコース(FDG)と、血管内のアポトーシスを反映するとされるTc-99m標識アネキシンA5(アネキシン)の2種類である。これまではこの動脈硬化モデル病変に上記の薬剤が高い集積を示すことを報告してきた。最終年度には主にオートラジオグラフィを用いてこれらの薬剤の集積性を定量評価し、その集積度と動脈硬化の病理組織学的所見と詳細な対比を行った。病理組織学上、動脈硬化病変をAHA分類でearly lesion(Stage II)、atheromatous lesion(Stage III,IV)、fibroatheromatous lesion(Stage V)の3群に分けて検討した。その結果、FDGとアネキシンA5の集積はStage III,IVに高く、かつ免疫組織学的検討でもmacrophage浸潤や脂肪沈着もこの時期が最も高いことが確認された。他方、病変のサイズはStage IからVになるほど大きくなる傾向があった。以上より、FDGとアネキシンA5の集積度は、病変のサイズを反映するのではなく、増殖を伴い、炎症細胞浸潤の高い不安定な動脈硬化病変の性状を反映していることが示唆された。以上よりこれらの新しいimaging probeを用いた核医学イメージング法は、CTなどの形態学的診断法とは異なり、動脈硬化の不安定性を同定できる可能性が高いことが示された。
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