研究課題
昨年度より、研究の一つの目的であるこの薬剤の全国展開の一環として、[18F]FRP-170を用いた低酸素細胞イメージングのPET検査が東北大学の他に滝沢村の岩手医科大学サイクロトロンセンター(仁科記念サイクロトロンセンター)で可能となった。岩手医科大学脳外科では、悪性グリオーマに対してFRP-170PET検査を行い、興味ある治験が得られた。6例の未治療glioblastoma multiformeに対し術前にFRP-170PETを行い、取り込みのhot spotとcold spotに定位的にmicro elctorodeを刺入し、それぞれの部位の平均SUV値と酸素分圧の相関を観察した。Hotspotとcoldspotの平均酸素分圧はp=0.02の危険率で有意にhot領域で低いことが示された。また、hot領域において、酸素分圧と平均SUV間に相関傾向を認めた(相関係数r=-0.72)。FRP-170PETで高集積を示す部分は低酸素分圧であることが証明され、FRP-170PET画像は信頼性の高い低酸素細胞検出画像であることが示された。これまで、東北大で得られていたhigh grade gliomaに認められた高いFRP-170取り込みが低酸素細胞であることが、岩手医科大学の研究で明らかにされたことはこのPET薬剤の全国展開にも重要な知見である。現在、新たに大分医科大学でFRP-170PETの導入を検討しているところである。岩手医科大学では術中、FRP-170画像とMRIをフュージョンさせてナビゲーションに導入し、FRPで高集積の部分はなるべく残存させないように摘出するなどの工夫をしており、この新低酸素イメージング剤を用いることにより非侵襲的に、脳腫瘍の低酸素状態を術前に評価することで治療法のデーラーメード化が可能となろう。東北大学での研究は東日本大震災によるサイクロトロンの破損(未だ復旧していない)により、今年度の進展は全くなかった。
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Int J Radiat Oncol Biol Phys
巻: 81 ページ: 1352-8
Radiot Oncol
巻: 6-150