本研究では認知症患者の判定に広く行われているベントン視覚記銘検査に適した"特殊なMRI"を開発し、脳機能・活動の直接的な観察情報を導入することによって、検査の精度・信頼度を劇的に向上させることを最終的な目標とし、そのための基礎的知見を得るための試験を行う。 本年度は、主として、このMRIに利用する特殊な磁場分布を発生する超伝導磁石の小型モデルを設計し、製造を行った。 ベントン視覚記銘検査では患者に絵を描くなどの作業を要求する。そのような作業を可能にするためには患者は座ることができて、しかも、ある程度の視野を保証されることが必要である。このためには患者が入るMRI磁石(垂直設置)の下端部分にMRI画像を取得するための均一な磁場が発生するような特殊な超伝導磁石コイル(複数)配置が必要になる。この条件では各コイルに加わる電磁力は、見かけの発生磁場から推定されるよりもはるかに大きくなるので、それが磁石全体の設計に影響する。磁場シミュレーションなどを利用してこの問題を検討し、予定する強度の磁場が発生できる見通しを得たので、磁石め作製に取り組んだ。磁石のコイルにはいずれも電磁力の影響を受け難いNbTi合金超伝導体の線材を使用した。磁場発生試験を行ったところ、所定の磁場(〜0. 7テスラ)を所定の位置に発生できることが確認された。次年度は、この磁石を収容できるクライオスタットを作製し、目的とする小型モデルMRIとして完成させる予定である。 この他に、MRIに関連する内外の会議で新しいMRIに関する発表を行った。
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