研究課題/領域番号 |
20390327
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菱川 良夫 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (20122335)
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研究分担者 |
村上 昌雄 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (50210018)
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (30346267)
出水 祐介 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50452496)
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キーワード | 癌 / 粒子線治療 / 陽子線 / 炭素線 / 生物学的効果 |
研究概要 |
1.培養細胞を用いた照射後細胞生存率の比較 粒子線治療の主要対象腫瘍の培養細胞(HSG:唾液腺癌、HMV-2:粘膜悪性黒色腫)を用いて、X線・陽子線・炭素線照射後の細胞生存率を比較した。良好なコロニー形成能を有するHSGには放射線感受性試験のゴールドスタンダードであるコロニー形成法を用いた。細胞生存率10%(SF10)での生物学的効果比(RBE)は陽子線1.10、炭素線1.96で従来とほぼ同様の結果であった。HMV-2はカウント可能なコロニーを形成しないため、薬剤感受性試験で頻用されるWST-8法を転用することとしたが、この方法の放射線感受性試験における信頼性を確立するため、まずHSGを評価してみたところ、SF10でのRBEは陽子線1.31、炭素線1.90とコロニー形成法の場合とほぼ同様の結果となり、転用可能であることが分かった。次にHMV-2をWST-8法で評価したところ、RBE(SF10)は陽子線1.25、炭素線2.49であり、HMV-2はX線・陽子線には抵抗性であるが、炭素線には感受性があることが明らかとなった。 2.照射による細胞およびコロニーの形態変化の評価 上記コロニー形成法を行う過程で、我々は照射後の細胞および形成されるコロニーの形態が、線種によって異なることに気付き、ダメージの度合いによって4グレード(G1:正常〜G4:高ダメージ)に分類し、評価した。その結果、臨床での治療線量に近いX線/陽子線2Gy・炭素線1Gyでは、X線に比べて陽子線・炭素線ではG4の割合が非常に高くなるが、高線量であるX線/陽子線6Gy・炭素線3Gyでは、線種間でのグレードの割合の差が小さくなることが分かった。 3.本年度の研究の意義 炭素線治療の粘膜悪性黒色腫に対する有用性が基礎的にも示された。治療線量の照射において、陽子線・炭素線は同一線量のX線よりも細胞にダメージを与えている可能性が高い。
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