本年度は半導体検出器を用いたスタティックデータ収集形頭部SPECTシステムの開発を行った。当初、4個程度の検出器モジュールを1セットにした検出器回路を設計し、頭部の半球面に接するように配置する予定であったが、電子回路系の仕様の詳細を入手することができなかったため、既存の検出器ユニットを用いたシステム構築を行った。この結果、頭部SPECTのプロトタイプシステムは、ガントリ形状を6角形とし、その3面に検出器ユニットを配した。また、感度を向上させるためにマルチピンホールシステムとし、投影データを効率的に収集できるようにするため、検出器を直線移動可能とした。また、サンプリング点を増加させるために、ガントリにウォブリング機構を付加した。このシステムの仕様は、あらかじめロッドファントムや脳ファントムなどの数値ファントムを用いたシミュレーションの結果から決定し、設計、製作を行った。設計、製作に時間がかかり、また、システム動作上の不具合を解決するのに時間がかかり装置は完成したものの、結果的にこの装置を用いた詳細な性能実験を期限内に行う事ができなくなった。さらに、3月の震災による実験施設の損傷、計画停電の実施などの影響を受けた事により、年度内の性能評価には限界がある事が明らかとなったので、4月以降に速やかに実験を実施し、成果発表を行う予定である。実機での評価は残念ながらできなかったが、試作機と同一のジオメトリで行ったシミュレーション結果では、従来の頭部SPECT画像の空間分解能よりも高い性能が出ている事が明らかとなった。
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