研究課題
遺伝子発現過程で重要なヒストン蛋白の脱アセチル化反応に着眼し、その酵素:HDACの基質となるPET診断薬:^<18>F-FAHAを新規合成し、癌組織内HDAC活性のBiomarkerとなるPET診断法を開発する。SAHAなどのHDAC酵素阻害剤は分子標的抗癌剤として注目され、^<18>F-FAHA-PETは、癌の早期診断や、HDAC酵素阻害剤による治療効果予測や治療後効果判定などを可能にし、HDAC酵素阻害剤による癌分子標的治療に大いに寄与すると期待される。平成22年度の研究成果は以下の通りである。(1) 正常マウス脳切片や腫瘍細胞を用いた薬剤集積実験を昨年度に引き続き検討継続を行い、^<18>F-FAHAは生体内でHDACの基質となり腫瘍への集積・滞留することが確認された。(2)また動物実験では、^<18>F-FAHAは投与後速やかに体内HDACとの反応により^<18>F-フルオロ酢酸(^<18>F-FACE)に代謝されることがTLCやHPLCを用いた代謝物解析検討で確認された。(3)これらの成果により2010年米国核医学会年会最優秀発表賞(脳神経部門2位)を受賞した。(4)サルを用いた画像化検討、薬剤の肝、腎への集積排泄が認められた他、脳集積も認められた。薬剤動態検討や臨床使用時の放射線被曝予想シミュレーションの結果、ヒトに^<18>F-FAHA 3.7MBq/kgを投与しても、現在臨床応用されている^<18>F-FDG PETと同程度の被ばく線量であることが算出され、^<18>F-FAHA PETの臨床応用への期待が確認された。(5)^<18>F-FAHAの中枢神経系における検討から、実験動物の加齢や脳代謝の変化と^<18>F-FAHA脳神経集積変化の関連が脳内HDACの局在と活性と密接に関連していることを示唆するデータが得られた。そして平成23年度から新たな基盤研究(B)(23300361)に移行し研究継続することになった。
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