研究概要 |
外科療法を含めて, 現在行われている癌に対する治療は, 癌のみではなく正常組織にも障害を及ぼす. この点を克服するために慶応大学理工学部の川口研究室との共同研究を行い, 外部から強い磁界を印加すると中心に存在する磁性体が発熱して薬剤を放出する機能性微粒子を試みた. 本年度は上記機能性微粒子の作成と薬剤放出機能に関して検討した. ポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)を温度感受性材料として, また外部磁界印加に反応して発熱する材料としてフェライト粒子を用いて複合粒子を作成した. 粒子の作成はPNIPAMシェル/PGMAコアのマイクロゲルを作製した後に, 粒子内で磁性体を生成する方法を用いた. 粒子の大きさは約50nmとした. 最初に外部磁界を印加した時の粒子の発熱特性を検討した. 交流磁場の条件を900kHz, 380eとした時, 30分で5.5℃上昇した. 次に粒子の温度特性を検討した. その結果45℃付近で水中粒径が3分の2になり, 生体で使用可能な温度設定を得ることができた. 次に作成した粒子にメチレンブルーを導入して, 薬剤放出能を検討した. その結果薬剤放出能が確認された. 以上から, 外部から強い磁界を印加すると中心に存在する磁性体が発熱して薬剤を放出する機能性微粒子の開発に成功した. 問題点として粒子径, 磁界強度, 薬剤の性質など多くの問題が未解決ではあるが, 来年度以降は薬剤を抗がん剤等に変更するなどして, 臨床応用可能な機能性微粒子作成を目指したい.
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