研究概要 |
ヒト胆道癌組織を用いた検討により,半数以上の胆道癌において,IL-4受容体を過剰に発現することが明らかとなった.正常胆嚢組織,正常胆管組織においてはIL-4受容体の発現は認めず,IL-4受容体は胆道癌における新規標的分子になりうる可能性が示唆された.ヒト胆道癌細胞株を用いた検討では,サイトトキシン療法(IL-4-PE)の良好な細胞障害が8種中4種で認められ,そのうち2種では非常に高い感受性を示した.ヌードマウスを用いた担癌モデルにおいては,皮下腫瘍モデルのみならず,腹膜播種モデルにおいても,IL-4-PEの良好な抗腫瘍効果が観察された.これらのことより,IL-4-PEは胆道癌に対する新規分子標的治療として有用である可能性が示唆された. 京都大学の川上らと今後の癌医療に向けた次世代の抗癌サイトトキシンの開発を手がけてきた.近年,細胞殺傷能力を有するペプチドの存在が報告されている.陽イオン抗菌ペプチドは,陰イオンに電荷しているがん細胞膜には結合しポア形成により毒性を発揮するが,哺乳類細胞は電荷が両性であることより障害をきたさない.癌細胞表面特異的な「弾頭ペプチド」と癌細胞膜融解による細胞殺傷効果を有する「爆薬ペプチド」を組み合わせ,抗癌活性を有する新規キメラペプチドを見出すことに成功し,この一群を「ハイブリッドペプチド」と命名した.ハイブリッドペプチドは担癌動物系において,強力な抗腫瘍効果と安全性が確認されている. 最終年度は,今年度内に作製を終了する,胆道癌に高発現するIL-4受容体とIL-6受容体に対するハイブリッドペプチド,また,癌遺伝子としてerbB2/erbB3 heterodimerを標的とするheregulin-ハイブリッドペプチドを用いた実験を計画している.
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