研究概要 |
【目的】 (1)がん幹細胞とがん化学療法臨床のつながり:化学療法抵抗性のメカニズム (2)非がん幹細胞からがん幹細胞への転換のメカニズム 【結果】 (1)1次がん幹細胞として、CD133+細胞を分離培養した。また、2次がん幹細胞として、CD133-細胞を分離し、in vitroで間質細胞と共培養した。それら培養系に、大腸がんの標準治療薬である5-FU,オキサリプラチン(Oxali),5-FU+Oxaliを投与した。1次がん幹細胞は、5-FU+Oxaliによって、標準投与量ですべて死滅した。一方で、2次がん幹細胞は、5-FU+Oxaliによって死滅に至らなかった。これは、化学療法抵抗性の出現と、2次がん幹細胞の生成が関連することを示唆する。 (2)上記(1)の系において、現在までに我々が2次がん幹細胞生成プロセスに対する分子標的であることを示してきたSDF-1の阻害剤+5-FU+Oxaliを投与すると、2次がん幹細胞も死滅した。結果、非がん幹細胞からがん幹細胞への転換のメカニズムにSDF-1が必須であることがわかった。一方、CD133-非がん幹細胞に、SDF-1を投与してもがん幹細胞への転換は得られなかった。そこで、このプロセスを詳細に調べるために、1次がん幹細胞、非がん幹細胞、2次がん幹細胞の差異を比較することにした。これら細胞の発現解析のために、microarray解析を行った。現在、その差異を形成する遺伝子群の候補を挙げることができた。 【意義】 がん幹細胞の能力を決める遺伝子候補が明らかになった。新規抗がん剤、特に抗転移薬の開発に繋がる可能性がある。
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