研究課題
経口摂取障害、体重減少は上部消化管癌手術に特異的かつ最も重篤な後遺症である。胃切除、胃管再建によるグレリンの低下がその主たる原因と考え、グレリンを補うことにより体重減少の抑制さらには体重の増加を期待すること目的している。胃全摘術後患者20名に対し、術後10日間のグレリン投与(3□g/kg1日2回)のランダム化比較試験を行った。グレリン投与群は食欲(VAS)、摂取カロリー、体重に於いてプラセボ群に優っていた。また体組成として脂肪は減少するが除脂肪体重は減少しにくい傾向を認めた。現在そのほかのホルモンなどのデータを集積中である。食道癌胃管再建患者についても同様の試験を行っている。食道癌術後はグレリンは胃全摘ほど低下しないが,体重減少はより高度であり、グレリン以外の原因の関与が考えられる。次年度中に終了し解析を行う。また胃切除後長期経過し体重減少を示す患者にグレリン投与で体重が回復するか否かの試験についても現在1例登録で引き続き試験を行う。グレリンは食欲増加、体重増加以外に抗炎症作用があり敗血症モデルにおける生存率の改善、蛋白異化の抑制など報告されている。食道癌の術直後よりグレリンを投与しSIRS期問の短縮、窒素バランスの改善などを目的とした第1相試験を倫理審査委員会に提出する予定である。また、最近抗癌剤投与時の食欲低下の原因がグレリンであると動物実験で報告されておりこれを人で検証するためにグレリン投与の臨床試験を予定している。胃全摘の標本を用いてグレリン産生細胞の分布と血中グレリン、萎縮性胃炎、ピロリ菌感染などとの関係を調べるグレリンマッピングの研究を開始し、現在までに12例のマッピングを終わっている。グレリン産生細胞の分布は個人差が極めて大きい。
すべて 2008
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