研究課題/領域番号 |
20390346
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 雅史 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (30372741)
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研究分担者 |
片野 光男 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10145203)
赤司 浩一 九州大学, 大学病院, 教授 (80380385)
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 助教 (30315080)
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キーワード | 大腸癌 / 乳癌 / 癌性幹細胞 / 薬剤耐性 / 移植 / Hhシグナル / WNT / SP |
研究概要 |
(目的)各臓器特異的な癌性幹細胞の制御法の開発。(材料と方法)大腸癌;大腸癌株よりcell sorterを用いCSCが想定されるSP分画を分離した。薬剤感受性と耐性遺伝子の発現変化、WNTシグナル活性の影響を解析した。乳癌;CSC分画と想定されているCD24-/low CD44+細胞(以下、CD24-細胞)をcell sorterで分離し、マウスへの移植による腫瘍形成能および多分化能、Hhシグナル系の活性化、Hh阻害剤の腫瘍形成能へ及ぼす影響を解析した。また新鮮乳癌組織中のCD24-細胞を解析した。(結果)大腸癌細胞中にはCSCに相当のSP分画が約1%存在し、Wntシグナル阻害によりSP分画細胞数は減少した。これはSPよりnon-SP分画(色素非排出性分画)への移行の結果であった。機序としてはWntシグナル阻害によるABC transporterの発現減弱の関与が示唆され、SP分画の抗癌剤感受性はWntシグナル阻害により亢進した。乳癌細胞中のCD24-細胞は25-35%であった。CD24-細胞およびCD24+細胞のin vitroにおける増殖能に有意の差に認めなかったが、マウス移植によりCD24-細胞のみが腫瘍を形成し、移植腫瘍組織でHh経路の活性化が確認された。m経路阻害はCD24-腫瘍形成能を有意に抑制した。乳癌組織中にはCD24-乳癌細胞が存在したが、その割合は症例により差が大きかった。(考察)大腸癌細胞中のCSCと想定されているSP分画の抗癌剤抵抗性にはWntシグナル活性化による薬剤排出能亢進が関与しており、Wntシグナル経路の制御が大腸癌の抗癌剤感受性亢進の一つの治療戦略となることが示唆された。乳癌細胞中には造腫瘍性のCSC様細胞が存在し、Hhシグナル系の造腫瘍性への関与が示唆され、Hhシグプル系はCSC制御の有望な治療標的となりうる可能性が示された。
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