本研究は、乳癌において大規模な糖鎖の網羅的解析(グライコミクス)を行うことにより1.早期診断バイオマーカーの同定、2.乳癌予後予測バイオマーカーの同定、3.バイオマーカーとなる糖鎖が結合する糖蛋白質の同定と機能解析(乳癌各サブタイプ)―乳癌の発生、進展のメカニズムの解明―を行うことを目的としている。乳癌患者350例と健常人女性100例の血清を用いてグライコブロッティング法により網羅的糖鎖解析を行った結果、両者を区別できる単独の糖鎖マーカーは見出せなかった。さらに良性乳腺疾患患者と乳癌患者の網羅的糖鎖解析においても、これらを区別できる単独の糖鎖マーカーは見出せなかった。 次に、乳癌患者の血清を用いた網羅的糖鎖解析結果と臨床情報の統計学的解析(乳癌のサブタイプ間での糖鎖プロファイル比較、予後解析など)を行った。これまでのところ、予後予測マーカーは見出されていないが、24種類の糖鎖を組み合わせることにより、予後予測が可能となる可能性を見出した。今後さらに症例数を増やして検討する予定である。
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