研究課題
今年度は主に臨床データについてまとめた。対象として、健常例30例、径4.5センチから外科的治療対象となる5センチ以上の大径瘤患者(胸部大動脈瘤:abdominal aortic aneurysm : AA) 24名(平均年齢78歳)を検討した。さらに急性大動脈解離(解離性大動脈瘤)43例(平均年齢70歳)を発症直後から経時的に入院28日まで採血した。採血した血清テネイシンCをELISAキットにて測定した。1)健常例の血清テネイシンC値は平均27.4±8.8ng/mlであった。2)急性大動脈解離(Stanford B型)43例の発症直後では、血清テネイシンC値は平均66.4ng/mlで、1週間後には82.4ng/mlと最高値を示した。徐々に低下し、発症28日後には40.4ng/mlと正常値内になった。短期予後について検討した結果、死亡群(3例)では生存群に比較すると有意に高値を示していた。3)外科的治療対象となる5センチ以上の大径瘤患者(AAA)48名の血清テネイシンC値は、16.6~122.2ng/ml(平均41.7)であった。しかし正常値以上を呈した症例数は5例であり、瘤径との関連は認められなかった。結論として、急性大動脈解離症例ではテネイシンCは新しい炎症バイオマーカーとして重症度・予後判定に有効であることが判明した。胸部動脈瘤(AAA)に関しては、今後のさらなる検討が必要であろう。なおマウスによる動物実験(In Vivo, In Vitro)では、初年度の成果をさらに実験によって再現性を確認し、血管内エコーによる生理的研究を行って、病理組織学的、分子生物学的な成果との総合的評価を行った。
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