本年度の研究では、制御性T(Treg)細胞の移植医療の臨床応用を目指して、今までの研究で明らかになった生体内数少ない細胞増殖抑制作用を持つTreg細胞を優位的に増やせる抗CD28 superagonist抗体(SupCD28抗体)を用い、腎移植、Graft versus Host Disease(GvHD)モデルにて、抗体投与後の活性化Foxp3陽性Treg細胞の動態をターゲットとし、その動態、抗原特異性および免疫抑制効果の機序について検討した。腎移植モデルを用いた移植片の生着延長効果の検討では、移植前或は直後に抗体を投与する事により顕著な生着延長効果が得られた。また、腎移植後の特異的な免疫寛容が誘導され、心臓テストグラフトの生着も確認できた。さらに、抗体の投与によるグラフト生着延長効果は、末梢血中のみならず、グラフト中浸潤細胞のFoxP3陽性Treg細胞による免疫抑制が関与していることが示唆された。GvHDモデルにおいては、生後24hr以内のDAラット新生児に、(LEW×DA)F1骨髄を投与し、Neonatal toleranceラットの作成し、GvHDの実験に用いた。SupCD28抗体をLewisラット由来のナイーブリンパ球移入前(-3日)に(LEW×DA)F1ラット、或はDA tolerant of(LEWxDA)F1ラットに投与し、GvH反応の抑制効果を検討した。(LEW×DA)F1ラットにおいては、SupCD28投与で増殖したTregの抑制効果はGvH反応発症の早期に有効であることを確認された。一方、DA tolerant of(LEWxDA)F1においては、SupCD28抗体投与有無関係なく、GvHDが発症した。Tolerant of(LEWxDA)F1ラットのSupCD28抗体投与によって増殖されたFoxp3陽性TregがDAラット由来であり、Lewisラット由来ナイーブリンパ球によるGvHDの発症を抑制できなかったため、Tregの免疫抑制作用は抗原特異的であることを示唆された。今後、移植領域においてこの抗体の新しい免疫抑制剤として期待されたい。
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