研究概要 |
本年度の研究は、主に間葉系幹細胞の移植片拒絶反応抑制に利用するための機序の解明であった。ラット骨髄1ヶ月間を培養後、付着細胞を回収し、磁気細胞分離(MACS)にて、抗CD11b抗体、抗CD45抗体を用いて、マクロファージ(Mφ、CD45+CD11b+CD90-)細胞、間葉系幹細胞(MSC、CD11b-CD45-CD90+)を精製分離した。また、MSCからクローニングし、クローン化MSC(cMSC)が得られた。これら三種類の細胞も用いて、抗体、ConA、アロ抗原刺激によるT細胞反応系に添加したところ、MSCはMφと同様各刺激に対するT細胞増殖反応の抑制機能を示した。しかし、cMSCはT細胞の増殖反応を増強した。一方、F1(LEW x DA,4~6週齢/120g)を放射線(6Gy)処理後、三種類の細胞(1.0×10^7cells)をそれぞれ投与し、翌日Naive Lewisリンパ球(1.0×10^7cells)を移植したGvHDモデルにおいては、MSCsおよびMφ細胞投与群では60日以上の生存が得られ、cMSC投与群では、無処置群と同様に23日前後であった。さらに、上記三種類の細胞の遺伝子発現プロファイリングによる包括的遺伝子発現パターンを比較した結果、MSC細胞においては特異的発現している遺伝子を明らかにした。ラット骨髄短期(1ヶ月間)培養後で分離精製したMSCが同時期のマクロファージと同様各刺激によるT細胞増殖活性およびGvH反応に対し抑制効果を有しており、今後、GvHD治療だけでなく臓器移植においても、この細胞を新たな免疫抑制細胞としての可能性を期待したい。また、クローン化MSCとの機能違いの検討結果および遺伝子発現プロファイルの活用により、MSC細胞における標的分子のスクリーニングや、MSC細胞の免疫生物学の抑制機能における分子機序について理解・解明されたい。
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