本年度の研究は、主にマウス同種異系心臓、肝臓移植拒絶・寛容モデルの解析及び移植後拒絶・寛容予測するバイオマーカーの探索であった。移植寛容モデルとして、B10.BR(H-2K^k)マウスの肝臓をB10.D2(H-2K^d)マウスへ同所性に肝移植を行った自然免疫寛容モデルにて、移植後5、8、14、30、100日目に移植肝、脾臓、リンパ節、血清等サンプルを採取した。一方、移植拒絶モデルとして、同様にB10.BR(H-2K^k)マウスの心臓をB10.D2(H-2K^d)マウスへ異所性に心移植を行った拒絶モデルにて、移植心、脾臓、血清等を採取した。組織はmRNAを精製し、蛍光物質で標識しプローブを作製し、作製したプローブをマイクロアレイにハイブリダイズし、移植心、肝組織、脾臓mRNA発現プロファイルを解析した。肝移植寛容モデルにおいては、30、100日目と移植後早期である5、8、14日目と比べ、数百個の有意に変化した遺伝子を見いだした。その中から統計学的な処理(t-test)を行い、109個(p<0.01)の候補遺伝子を見つけた。心移植拒絶モデルでは、遺伝子発現のパターンは主に移植後5、8日での急性拒絶期では500数個の統計学的に有意に変化した候補遺伝子を見つけ、既存の免疫活性に関わる遺伝子の高発現が認められた。また、肝臓移植モデルの移植後早期(5、8、14日)との相関・相同性についても確認できた。アレイ結果の検証方法として多機能ジーンエクスプレッサーGeXPを試みたGeXPはマルチプレックスRT-PCRアプローチを使い、25遺伝子の発現定量解析を1反応で同時に測定することができ、その発現をさらに定量RT-PCRにて確認を行い、アレイでの結果の相関性の確認が出来た。今後GeXP法による移植後拒絶・寛容を予測できるバイオマーカーの発見、患者に対する免疫抑制療法の軽減や休止の指標として期待したい。さらに、今年度では、Naive B6マウスの脾臓からT細胞を精製分離し、BDF1(B6xDBA)マウスへのリンパ球輸入による急性GvHDモデルも確立でき、今後、免疫細胞療法の実施へと繋げていきたいと考えている。
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